古い石造りの狭い階段を、一人が上っていく後ろ姿。段はすり減り、奥のアーチから午後の光が差している。

WORLD 079 STORIES

HISTORY

昔のことを知ると、今の見え方が少し変わる。

  1. 1917年1月19日の日付印がある、古いウェスタンユニオンの電報用紙。宛先はメキシコシティのドイツ公使館で、本文は5けたほどの数字がびっしり並んでいる。数字が並んだだけの電報1枚が、アメリカを第一次世界大戦に引き入れたロンドンの「ルーム40」が読み解いた1917年、ドイツの外務大臣がメキシコに送った暗号電報。「メキシコがテキサスなどを取り戻すのを了解する」。それを解読したイギリスは、暗号を解いていることを隠しながら、どうアメリカに見せるか考えた。
  2. 暗い部屋の木のテーブルに、ろうそくが4本ともった小さな白いケーキ。横にもろうそくの灯り。AIで作った絵で、実際の写真ではない。「ハッピーバースデー」には、2015年まで持ち主がいた始まりは、幼稚園の「みなさん、おはよう」誕生日の歌を映画で使うと、使用料を払う必要があった。その額は年に最大200万ドルほど。2015年、アメリカの裁判所は、持ち主とされた会社が歌詞の権利を持っていないと判断した。歌のはじまりは、1893年の幼稚園の朝の歌だった。
  3. 田舎の家のポーチで、木のロッキングチェアに掛けられたパッチワークのキルト。花柄やギンガムチェック、水玉の小さな四角い布がつながっている。床には、ひもで縛った麻の袋。AIで作った絵で、実際の写真ではない。小麦粉の袋が、花柄のワンピースになったアメリカの農家の女性たちと、パッチワークのキルトの話アメリカの農家では、小麦粉やえさの布袋を洗って服を縫い、残った布でキルトを作った。袋が花柄になったのは、やさしさか、商売か。端切れから生まれたと思われているパッチワークの、少し意外な歴史。
  4. 黒い地に、ヴィクトリア女王の白い横顔が刷られた切手が、2枚ずつ2段、4枚つながっている。上に「POSTAGE」、下に「ONE PENNY.」の文字と、隅にアルファベット。200年前の手紙は、受け取った人がお金を払っていた世界最初の切手「ペニー・ブラック」を作った、元教師の冊子1840年まで、イギリスの手紙は、届いた人が料金を払うものだった。距離と紙の枚数で決まる、高くて複雑な料金。それを「どこまでも1ペニー、先払い、しるしの紙を貼る」に変えたのは、郵便の役人ではない、ひとりの元教師だった。
  5. 古い設計室の木の机の上に、白い粘土で作った、丸みのある細長い模型が置かれている。まわりに図面と鉛筆。AIで作った絵で、実物の写真ではない。新幹線0系の丸い顔は、海軍の爆撃機を設計した人が形にした「美しい形は、空気抵抗が少ない」1964年に走り出した新幹線0系。その丸い顔を決めた研究室の室長は、戦時中に海軍で爆撃機と特攻機を設計した技術者だった。銀座の講演会、粘土の模型、時速256kmまでをたどる。
  6. 1914年のクリスマス、無人地帯に出て並ぶイギリスとドイツの将校たち。厚いコートと軍帽の男たちが、カメラの方を向いている。白黒写真。撃ち合っていた兵士たちが、クリスマスの夜に歌い出した1914年の「クリスマス休戦」1914年のクリスマス、西部戦線で敵味方の兵士が塹壕から出て握手を交わした。教皇の呼びかけ、歌と贈り物、サッカーの真偽、そして翌年は起きなかった理由を、記録からたどる。
  7. うすい灰色の壁の前で、こちらを見ている男性の白黒写真。背広にネクタイ姿で、胸の前に「M 50」と書かれた札がある。ロスアラモス研究所が、身分証のために撮った、ジョン・フォン・ノイマンの写真。ゲーム理論の出発点の論文の題は、「みんなで遊ぶゲームの理論」だった6歳で父と古代ギリシャ語の冗談を言い合った天才ノイマンが、1928年に「みんなで遊ぶゲーム」の論文で示した、ゲームで損をしない手の選び方を、じゃんけんで読む。
  8. ポンペイの軽食店のカウンターの正面。大きな絵に、海馬に乗る海の精ネレイスが描かれている。色はうすれているが、人物と、はためく布が見える。ポンペイの軽食店のカウンターには、看板のような絵が描かれていた2019年、ポンペイの小道の角で見つかった軽食店(テルモポリウム)。カウンターには、海の精の絵と、「ほとんど看板のよう」と説明される絵があった。公式の説明をたどる。
  9. 戦国時代の青銅の壺。四角い口と、ふたがある。表面には、細かい渦の模様と、獣の飾りが並んでいる。河南省博物院の展示で、今回見つかった壺ではない。2300年前の「一杯」が、青銅の壺の中に残っていた中国北部の戦国時代の墓から出た青銅の壺に、およそ3.7リットルの液体が残っていた。二重の封で守られた、2300年前の穀物の酒の正体を、分析の結果と報道をたどって読む。

トップへ戻る