暗い部屋の木のテーブルに、ろうそくが4本ともった小さな白いケーキ。横にもろうそくの灯り。AIで作った絵で、実際の写真ではない。

HISTORY・・記事内容:約2分

「ハッピーバースデー」には、2015年まで持ち主がいた。始まりは、幼稚園の「みなさん、おはよう」

誕生日の歌を映画で使うと、使用料を払う必要があった。その額は年に最大200万ドルほど。2015年、アメリカの裁判所は、持ち主とされた会社が歌詞の権利を持っていないと判断した。歌のはじまりは、1893年の幼稚園の朝の歌だった。

※生成画像

誕生日のケーキにろうそくを立てる。部屋の明かりを消してみんなで歌う。「ハッピーバースデー・トゥー・ユー」。

世界でいちばん知られた歌のひとつだ。でもこの歌には長いあいだ持ち主がいた。映画やテレビで使うたびにお金を払う必要があった。2015年にアメリカの裁判所が「その持ち主は歌詞の権利を持っていない」と判断するまでは。

はじまりは、幼稚園の朝の歌

1893年、アメリカ南部ケンタッキー州で幼稚園の先生だったパティ・スミス・ヒルとミルドレッド・ヒルの姉妹が1冊の歌の本を出した。『幼稚園のための歌の物語』である。

その中に、「グッド・モーニング・トゥー・オール(みなさん、おはよう)」という歌があった。いまの誕生日の歌と同じメロディーだ。

姉妹はこの歌の権利を楽譜の出版社クレイトン・F・サミーに渡した。

朝の歌が、誕生日の歌に

朝のあいさつの歌は、いつのまにか誕生日の歌になっていた。

裁判所の判断によると、誕生日の歌詞が出版物に出てくるのは1901年。全部の歌詞が印刷されたのは、1911年だった。パティが「歌詞も自分が書いた」と言い出したのは、1930年代になってからだ。

サミーの会社が持っていた権利は、その後別の会社へ移った。1988年、大手のワーナー・チャペルがその会社を買った。

年に、およそ200万ドル

ワーナー・チャペルは、この歌の著作権を持っていると主張した。

家の誕生日会で歌うぶんには、もちろん問題はない。でも映画やテレビ番組、商品など、お金がからむ場面で使うときは、使用料を求めた。その額は年に最大200万ドルほどと見積もられている。

ドキュメンタリーを作ろうとしたら

2013年。この歌の歴史をドキュメンタリーにしようとしていた映画監督のジェニファー・ネルソンは歌を使うために1,500ドルを請求された。

ネルソンは、ほかの映像作家たちと一緒にワーナー・チャペルを訴えた。これまでに払ったお金を返してほしいと。

2015年の判断

2015年9月。ロサンゼルスの連邦地方裁判所のジョージ・キング判事はこう判断した。

メロディーは、ずっと前から誰のものでもない。そして、サミーの会社が手に入れていたのはピアノの編曲などの権利だけで、歌詞の権利ではなかった。だからその後を継いだワーナー・チャペルも歌詞の著作権を持っていない。

その年の12月、両者は和解した。和解が正式に決まれば、この歌は誰でも自由に使えるようになると伝えられた。

ネルソンはAP通信にこう話している。誰もが知っていて、一緒に育ってきた歌なのに、それに著作権があって使用料を払わなければならないなんて誰も知らなかった。

ろうそくの前で

幼稚園の朝のあいさつとして生まれた歌が、いつのまにか誕生日の歌になり120年あまり。

いまは、誰のものでもない歌として世界中のろうそくの前で歌われている。

次の誕生日に歌うとき少しだけ思い出してみる。この歌のはじまりは、ケンタッキーの幼稚園の「みなさん、おはよう」だった。

出典

情報確認:2026年10月

次の一杯