暗い部屋で、古いブラウン管テレビが光っている。画面には青空とレンガの床と緑の丘の、ドット絵の景色。床にコントローラー。AIで作った絵で、実際のゲーム画面ではない。

CULTURE & HOBBY・・記事内容:約3分

スーパーマリオの最初の面は、説明書の代わりだった。クリボーとキノコが、遊び方を教えている

1985年の『スーパーマリオブラザーズ』の最初の面「1-1」は、文字の説明なしで遊び方が伝わるように作られていた。クリボーとキノコの置き方に込めた仕掛けを、宮本茂さんの言葉からたどる。

※生成画像

電源を入れると青い空。左端に小さなマリオ。右へ進むとハテナマークのブロックと、向こうから歩いてくるキノコのようなもの。

1985年に任天堂が発売した『スーパーマリオブラザーズ』。その最初の面「1-1」は、何度遊んだかわからない人も多いと思う。

あの面には説明の文字がひとつもない。それでも遊び方が自然に伝わるように作られていた。

教室で、1-1を解説する

2015年7月、イギリスのゲームメディア「ユーロゲーマー」が、イギリスを訪れていた宮本茂さんと、長年の相棒である手塚卓志さんに会った。シリーズ30周年と、自分でコースを作れる新作『スーパーマリオメーカー』の発表のころだ。

ユーロゲーマーは、宮本さんに1-1を教室の授業のように解説してもらった。その動画が、9月に公開された。日本のニュースサイト「GIGAZINE」が、その内容を伝えている。

歩いてきたら、よける。ハテナがあれば、たたく

1-1の最初、ハテナブロックが並んだ奥から、クリボーが歩いてくる。

宮本さんの説明はこうだ。

「プレイヤーは何かが前から歩いてきたらよけるだろうと。ブロックはハテナマークがついているのでたたくよねと」

クリボーをよけようとジャンプすれば、頭上のブロックをたたく。ブロックをたたくとキノコが出てくる。逃げようとしてジャンプすると、そのキノコに当たってしまう。そしてマリオは大きくなる。

失敗したと思ったら得をしている。この一連の流れでゲームが何をするものかがわかる。

「人が自然にしそうなことを考えながら、少しずつ教えていくイメージで作りました」

クリボーは、最初はカメだった

最初の敵はもともとクリボーではなかった。

最初はカメ(ノコノコ)を置くつもりだった。でも踏んでこうらを蹴ってという遊び方は、初めての人には難しい。そこで踏むだけで倒せる敵を新しく作った。

黒っぽいキノコのような絵を見たプログラマーが「クリ(栗)だ!」と言った。それで名前がクリボーになったという。

小さいマリオは、大きくなるためにいた

アメリカのテクノロジーメディア「BGR」も、この動画を伝えている。そこで紹介されている言葉がある。

大きなマリオになったとき、プレイヤーに本当に満足してほしかった。だから先に小さなマリオを作った。

そしてあやしいキノコなら、世界のどこでも通じると考えたとも。

25年たっても、クリボーは踏まれている

2010年、任天堂の社長だった岩田聡さんは、25周年の対談シリーズ「社長が訊く」で、1980年代生まれの開発者たちと話している。

ひとりはマリオではコインがルートを教えてくれる、と言った。どこをどう跳べばいいのか、コインが隠れたメッセージになっている。

岩田さんは笑ってこう返している。「確かに最初に出てくるクリボーは、いつも踏んづけられて倒され続けていますからね」

いちばんいい説明は、説明しないこと

いまのゲームには丁寧な説明がたくさんある。それも親切だ。

でも1-1は文字を読ませずに教えた。人が自然にしそうなことを先に考えて、その通りに体が動くようにブロックと敵を置いた。

久しぶりに1-1を遊んでみると、自分の指がどう動くか少し観察してみたい。40年前に誰かがそこまで考えていた。

出典

情報確認:2026年10月

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