夕暮れの雲の上を飛ぶ、飛行機の操縦席の中から見た景色。手前に2つの座席の背もたれ。オレンジと青の空。AIで作った絵で、実物の写真ではない。

BODY & HEALTH・・記事内容:約3分

NASAが操縦席で試した「26分の昼寝」。管制官が居眠りした夜、その研究者は昼寝を訴えた

2011年、管制官の居眠りで2機が管制なしで着陸した。17年前にNASAで操縦席の昼寝を研究した人物は、そのとき昼寝を訴えた。研究の中身と、日本の厚生労働省の指針の目安をたどる。

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2011年3月の深夜。アメリカの首都ワシントンの、レーガン・ナショナル空港。

着陸しようとする旅客機が管制塔を呼んだ。返事がない。もう1機も呼んだ。やはり返事がない。

2機は管制塔の助けのないまま滑走路に降りた。

その夜、管制塔にいたのは監督役の管制官1人だけ。彼は眠ってしまっていた。

居眠りは、1件ではなかった

その後の数週間で管制官が勤務中に眠っていた例が、次々に明らかになる。ネバダ州のリノ・タホ空港では、重い病気の乗客を乗せた飛行機が管制塔を呼んでいたのに、ただ1人の管制官と、16分間連絡がつかなかった。

連邦航空局(FAA)は、26の空港で夜勤を2人体制にした。航空管制のトップは辞任した。

同じ年の10月、国家運輸安全委員会(NTSB)は、レーガン空港の件の原因をこうまとめた。睡眠不足による意識の喪失。続いた夜勤の疲れ。そして、FAAの勤務の組み方。

人は眠気には勝てない。問題はその眠気をどう扱うかだった。

17年前、NASAは操縦席で昼寝を試していた

このとき昼寝を検討すべきだと声を上げた人がいる。NTSBの委員マーク・ローズカインド。以前はNASAで眠りの研究をしていた人だ。

1994年ローズカインドたちは、NASAのエイムズ研究センターで、ある報告書をまとめている。題は「長距離便で操縦席での計画的な休息が、乗員の成績と覚醒に与える影響」。

長距離の国際線で仕事が落ち着いた巡航中に、パイロットに40分の休息の時間を与える。そのあいだはほかの乗員が操縦を続ける。休息をとったのは12人。とらなかったグループは9人。

結果はこうだった。

つまり、40分の休息のうち、実際に眠っていたのは平均でおよそ26分だった。この「26分」は、パイロットが眠った平均時間の25.8分を丸めた数字である。

昼寝をとった側はとらなかった側より目がさえていて、作業の成績も良かった。その差はいちばん大事な降下と着陸のときまで続いた。到着後の眠りに悪い影響はなく、安全上の問題も見つからなかったという。

アメリカの睡眠の情報サイト、スリープ・ファウンデーションは、この研究を「26分の昼寝で覚醒が最大54%、成績が34%上がった」と紹介している。「NASAの昼寝」と呼ばれる話の元はここにある。

「職場で寝ることに、給料は払わない」

ところが2011年、FAAの長官はこう答えている。

FAAでは、職場で眠る人に給料を払っていない。

(意味を日本語にしたもの。)

ローズカインドは「検討のテーブルには載せるべきだ」と訴えた。それでも管制官の勤務中の昼寝は、このときは認められなかった。代わりに夜勤の人数を増やし、勤務の組み方を見直す道が選ばれた。

日本の目安は「午後の早い時刻に、30分以内」

日本の厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」にも、昼寝の話が出てくる。

午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的です。

長く寝すぎると起きたあとにぼんやりする。これを「睡眠慣性」という。だから30分以内がいいと指針は書く。夜勤のあいだの短い仮眠も眠気を防ぐのに役立つ。ただし夜の仮眠のあとはぼんやりが強く出やすいので、すぐに作業を始めないようにとも書いてある。

窓辺にある革の椅子。毛布と枕が置かれ、横の小さな机にコーヒーのカップがある。AIで作った絵で、実物の写真ではない。
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昼寝のコツは、ちょっとだけ

まとめるとこうなる。

スリープ・ファウンデーションは、昼寝の直前にカフェインをとると、目覚めがもっと良くなる場合があるとも書いている。

眠っているあいだも、飛行機は飛ぶ

操縦席で目を閉じられるのは、隣で起きている誰かがいるからだ。あの夜の管制塔にはその誰かがいなかった。

NASAの研究でパイロットが眠ったのは、平均でおよそ26分。それだけ目を閉じて、また操縦かんを握る。昼寝はひとりで頑張りすぎないための、大人の技術なのかもしれない。

出典

情報確認:2026年10月

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