
FOOD・・記事内容:約3分
ミモレットの皮には、チーズダニの仕事が入っている
ふつうのチーズでは払われてしまうダニが、ミモレットでは歓迎される。数年かけて皮をかじらせ、出荷前に空気とブラシで落とす、少し変わった熟成の話。
KarstenBuhr58 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
オレンジ色の丸いチーズ
フランスにミモレットというチーズがある。
丸くて切ると中は鮮やかなオレンジ色をしている。
少し珍しい色をしているだけで見た目はふつうのチーズだ。
ところがこのチーズの皮と風味には小さな虫が関わっている。
チーズダニ。
顕微鏡で見るような大きさの、ダニの一種だ。
アメリカの公共ラジオ局NPRは、2013年にこのチーズを取り上げミモレット独特の皮と風味にはこのダニが関わっていると伝えた。
ダニはふつう「困りもの」。ここでは歓迎される
チーズダニは熟成させたチーズの表面にすみついて表面に生える小さなカビを食べて暮らしている。
NPRによれば、多くの熟成チーズではダニは業界にとってのやっかいものだ。見つけたらそっとブラシで払い落とされる。
ミモレットではそれが逆になる。ダニはむしろ歓迎される。
数年のあいだ皮をかじらせて売る前に圧縮空気とブラシで落とす。
それでも取りきれなかったダニが少しは残るという。

ハーバード大学でチーズの研究室を運営している微生物学者のRachel Duttonさんは、ダニが皮をかじると皮の表面積が増えて空気にも触れやすくなると説明している。そうなるとほかの微生物がはたらきやすくなるのだという。
ダニの役割は皮だけではないらしい。2016年の研究は、ミモレットなどに特有の「レモンのような風味」がチーズ自体の発酵ではなくダニが出す物質によるものだと結論づけている。
2013年ダニの数でチーズが止まった
そのミモレットが2013年アメリカで小さな騒ぎになった。
NPRが2013年5月に伝えたところでは、アメリカのFDA(食品医薬品局)が1トンを超えるミモレットをアメリカに入れずに止めていた。
FDAの担当者によると、公式な上限はないが目標値は1平方インチ(約6.5平方センチ)あたり6匹以下だった。NPRはこれをミモレットにとって「ほぼ不可能に近い基準」と書いている。
ミモレットの大手生産者、Isigny社の北米担当のBenoit de Vittonさんは「ダニのせいで人が食べるのに適さないと言われた」と話している。
一方でDuttonさんによれば、ダニによるアレルギーの報告はあるがそれは大量のダニに触れた人に限られているようだ。
フランスではミモレットを支持する声がラジオや動画、SNSでも広がったという。
ここまでは、NPRが2013年5月の時点で伝えた話だ。その後のことは、この記事では確かめていない。
「チーズは生きている」
Duttonさんは笑いながら言う。
「チーズはまさに生きている」
カビ、細菌、酵母、そしてダニ。そうした生き物たちのはたらきがチーズをつくっている。
パンもヨーグルトもワインもさまざまな微生物の発酵でできているとDuttonさんは続ける。
NPRは記事を、こう結んでいる。フランスの多くの人にとってミモレットは記憶と家族と故郷の味だ。そしてダニも一緒にいる。
知らなくても、困ることはない。
でも次にミモレットを見かけたら、あの皮のことをちょっとだけ思い出すかもしれない。
出典
- NPR The Salt「Tiny Mites Spark Big Battle Over Imports Of French Cheese」(2013年5月11日)
- Brückner A, Heethoff M.「Scent of a mite: origin and chemical characterization of the lemon-like flavor of mite-ripened cheeses」Experimental and Applied Acarology(2016年)
情報確認:2026年10月


