夕焼けの空に、何千羽もの鳥が黒い点の群れになって広がっている。下は黒い森のシルエット。デンマークで撮られた写真。

NATURE・・記事内容:約3分

夕方の空でうねる、何千羽もの鳥の群れ。1羽が気にしているのは、近くの7羽だけだった

秋から冬の夕方、ヨーロッパの空でホシムクドリの群れが黒い雲のようにうねる。リーダーはいない。それぞれの鳥は、近くの6〜7羽に合わせて飛んでいるだけだった。

写真: Christoffer A Rasmussen / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)。縮小・再圧縮・メタデータ削除あり

秋から冬の夕方、ヨーロッパの空にときどき黒い雲のようなものが現れる。ふくらんだりちぎれたり、波のようにうねったりする。近づくとそれは何千羽もの鳥の群れだとわかる。

ホシムクドリという鳥だ。日本の公園にいるムクドリの仲間で、黒い羽に白い星のような点がある。英語ではこの群れの飛び方を「マーマレーション」と呼ぶ。「ささやき(murmur)」から来た言葉で、たくさんの羽音が低くざわめくからだという。

日がしずむ前の45分

アメリカのクラークソン大学の生物学者トム・ランゲンはこう説明している。群れができるのは秋と冬と早春の、日がしずむ1時間ほど前。うねる飛行は45分ほど続き、そのあと鳥たちはねぐら(夜に眠る場所)へ降りていく。

多いときは75万羽が一緒に飛ぶという。デンマークには100万羽ほどと見積もられた群れもあり、「黒い太陽」と呼ばれている。

リーダーはいない

これだけの数がぶつからずに向きを変える。誰かが指示を出しているように見える。でもナショナル ジオグラフィックによると、群れにリーダーはいない。

では、どうやってそろえているのか。

イタリアの研究チームが、空を飛ぶ数千羽の群れの1羽1羽の位置を立体的に割り出した。2008年に発表された結果では、それぞれの鳥は平均して近くの6〜7羽の仲間に合わせて飛んでいた。

大事なのは「何m以内の鳥」ではなく「近いほうから何羽」だったことだ。群れがぎゅっと詰まってもまばらに広がっても、気にする相手の数は変わらない。研究チームはこれが群れを崩れにくくしていると考えた。

1羽の動きが、群れの端まで届く

2010年には同じグループがもうひとつ面白いことを示した。1羽の向きや速さの小さな変化は、となりへ、そのまたとなりへと伝わっていく。群れが大きくなっても、伝わる範囲は群れと一緒に広がっていた。

7羽しか見ていないのに、群れ全体がひとつの体のように動ける。その理由がここにある。

なぜ、うねるのか

いちばん有力なのは、敵から身を守るためという説だ。

ホシムクドリを狙うのはハヤブサのような鳥。ハヤブサは群れの外から一気に襲いかかる。ナショナル ジオグラフィックは、ハヤブサが来たときにいちばん複雑なうねりが起きると書いている。波のような動きに、襲う側は1羽に狙いを定めにくくなる。

数が多いほど、自分が狙われる確率も下がる。ランゲンはこれを「自分勝手な群れ」の効果と呼んでいる。

夜にくっついて眠ると温かい、仲間をねぐらに呼ぶ合図になっている、という説もある。ただ大きな群れはかえって敵を呼び寄せることもある。なぜうねるのかには、まだ謎が残っている。

日本の夕方の、あの騒がしさ

日本のムクドリも、秋から冬にかけて大きな群れになる。日がしずむとすぐ、駅前の街路樹などのねぐらに帰ってくる。鳴き声やふんに困っている町も多い。

あの騒がしさも、もとをたどれば同じ理由なのかもしれない。暗くなる前に仲間と集まる。

夕方の駅前でムクドリの群れが木に降りてくるのを見かけたら少しだけ空を見上げてみる。1羽1羽はとなりの7羽を見ているだけ。それでも空いっぱいの形ができる。

出典

情報確認:2026年10月

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