日の差す部屋の木の床に、組み立てたばかりの白木の小さな棚。床には六角レンチとねじ、横にコーヒーのマグ。AIで作った絵で、実際の写真ではない。

MIND・・記事内容:約3分

自分で組み立てた棚は、少し傾いていても気に入る。「IKEA効果」は、最後まで作ったときだけ起きる

自分で組み立てた箱には63%高い値段を、自分で折った折り紙には5倍近い値段をつける。ハーバードなどの研究者が名づけた「IKEA効果」。ただし、組み立ててから壊すと、その愛着は消えた。

※生成画像

週末、説明書とにらめっこしながら組み立て式の棚を作る。ねじが1本余って少し傾いている。

それでもなぜか気に入っている。お店で完成品を買ったらこんな気持ちにはならなかったかもしれない。

この気持ちには、名前がついている。「IKEA効果」。

自分で組み立てた箱は、63%高い

2012年、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ノートン、カリフォルニア大学サンディエゴ校のダニエル・モション、デューク大学のダン・アリエリーが、ある論文を出した。題は『IKEA効果 手間は愛につながる』。

最初の実験に使ったのは、IKEAの何の変哲もない収納箱だった。

参加者の半分には箱を自分で組み立ててもらった。残りの半分には組み立て済みの同じ箱を渡した。そしてこの箱をいくらなら買うかを聞いた。

自分で組み立てた人は、組み立て済みの箱を見ただけの人より63%高い値段をつけた。箱を気に入っている度合いもずっと高かった。

折り紙のカエルは、5倍の値段

次は折り紙だった。参加者に、カエルか鶴を折ってもらう。

折った本人がつけた値段は平均23セント。ほかの人がその作品につけた値段は5セント。5倍近い差だ。

ほかの人から見れば、くしゃっとした紙にすぎない。でも折った本人にとってはちゃんと価値があった。

さらに面白いのは、別の人たちが折り紙の名人の作品につけた値段だ。27セント。折った本人たちは自分の素人の作品に、名人の作品とほとんど同じ値段をつけていた。

しかもほかの人も同じくらい高く評価してくれるだろうと思っていた。

壊すと、消える

ただし、この効果には条件があった。

レゴを使った実験では、組み立てたあとでばらばらに崩してもらった人たちもいた。すると自分のセットへの評価の上乗せはほとんど消えた。

IKEAの箱を手順の途中までしか組み立てられなかった人たちも同じだった。最後まで組み立てた人は、途中で止められた人の2倍以上の値段をつけた。

手間をかけるだけでは足りない。最後まで自分の手で完成させること。それが愛着につながっていた。

ふだんから日曜大工が好きな人だけの話でもなかった。慣れていない人にも、同じ効果が出た。

卵をひとつ、足してもらう

論文は冒頭で、こんな話を紹介している。

1950年代、アメリカでケーキミックスが売り出された。家事をなるべく楽にするための商品だった。ところが最初は思うように受け入れられなかった。あまりに簡単すぎて、自分の手間や腕前が軽く見られているように感じた人がいたというのだ。

そこでメーカーは、作り方を変えた。卵を自分で割って入れてもらうことにした。

理由はほかにもあったかもしれないと論文は書いている。でも手間を少し足したことが大事な役割を果たしたように見えると。

手を動かした分だけ

組み立てた棚が傾いていても愛着がわく。自分で淹れたコーヒー。自分で育てたバジル。自分で書いた企画書。

ただ論文の結果は、少しだけ注意もうながしている。私たちは自分で作ったものを、ほかの人も同じくらい高く評価してくれると思いがちだ。会議で自分の案にこだわりすぎるとき、IKEA効果が働いているのかもしれない。

それでも週末に組み立てた、少し傾いた棚。あれはたぶんそのままでいい。最後まで自分で作ったものだから。

出典

情報確認:2026年10月

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